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入選

自由図書 小学校高学年の部 内閣総理大臣賞

特に内閣総理大臣から許可を得ているわけではありません。

作品情報

応募者名: 甘味小麦

対象図書: 自由図書 うかる!データベーススペシャリスト2023年版

区分: 小学校高学年の部(1200字以内)

感想文

講評(クリックで表示)

講評:ほろあま

選んだ図書が試験対策書ということで、少し不安でしたがとても読み応えのある立派な読書感想文でした。読書を避けられない恐怖対象として捉え、それに立ち向かう決意を感じさせる文章ですね。また、毎年買う必要のある質の悪いシステムについて説明することで、より本の恐ろしさが補強されています。そして、冒頭で課題図書である「ごん狐」を挙げることで、読み返すことの価値を対比させてるのも上手いと思いました。読書の持つ嫌な面を臆せず表現した価値ある読書感想文だと思います。(文字数を超えてる気がしますが許します)

内閣総理大臣賞おめでとうございます。

『私は人生で二度読みたくない本を三度読む』
甘味小麦

一般的に小説や詩集など、名著と呼ばれている本は何度読み直しても良いものである。今回推薦図書として選ばれている「ごん狐」のような名著は国内外問わず溢れており、見つけるのは難しくないであろう。そんな時代の中、私は人生で二度と読みたくない本を三度読み直し、同時に恐怖を感じているのだ。その本とは「うかる!データベーススペシャリスト2023年版」である。何を隠そう、赤本と同じカテゴリである試験対策書である。
 データベーススペシャリスト(以下DB) とは、独立行政法人情報処理推進機構(以下IPA)が毎年行っている国家試験の一つである。主にデータベースシステムの構築やデータ分析等の固有技術を持つ証としての資格であり、合格率は平均して15%ほどである。私はIT技術者の端くれとして年々この試験に挑み続け、そして敗北する人生を送っている。そして今年も流れるようにこの本を手に取る運びとなった。
 「うかる!データベーススペシャリスト2023年版」の内容に触れておこう。この本は5章+昨年度の試験問題及び解答の6章構成となっている。序章でDBの出題傾向や午前・午後それぞれの試験についての対策について大まかに記載されている。第1章から第4章まではDBを受ける上で必須となる知識を詰め込む部分となっている。DBは専門性が高い試験であるため、内容自体は狭く深い。特筆すべきは過去問の章である。書籍自体には過去一年分しか記載がないが、公式サイトから購入者が解読できるパスワードを入力することで昨年以前の試験問題及び解答の解説を閲覧することができる。
ここまで読んで理解されていると思うが「うかる!データベーススペシャリスト2023年版」は一年ごとに繰り返し発行される、俗にいう逐次刊行物である。その内容は前年の試験の模範解答などを組み込んでいるのみでほぼほぼ変化はないため、2021年版と2022年版は私の本棚に眠っているが、もう二度と読まれることはない。何故新しい版が出るたびに購入しているのか、それは昨年以前の試験問題が閲覧可能となるパスワードが1年間しか機能しないためである。
 前置きが長くなってしまったが、私は本書を二度読みたくない本だと感じている。序章から第四章まで過去版とほぼ同じ内容が綴られているという理由だけではない。ほぼ同じ内容を過去読んでいるはずであるのに、一年の間に頭から抜けており新たな学びとして頭に入るという体験を私は「恐怖」として認識しているのだ。本を読み進めるにつれて去年は頭に入れたはずの内容が新鮮な情報として再度目に映る。そのたびに自身に嫌気が差しながら、ただ合格のために読み進める。これは一種の自傷行為と言っても過言ではないのかもしれない。
 私は本書を通じて、学び直して入る情報は恐怖と近しいという教訓を得た。それでも私は本書を熟読しなければならない。「次回の試験で受かるため」ではなく「恐怖から脱するため」に、今年も読まなければならない。

縦書き版

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