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入選

自由図書 小学校高学年の部 内閣総理大臣賞

特に内閣総理大臣から許可を得ているわけではありません。

作品情報

応募者名: たーんえー

対象図書: 自由図書 [ ほうかごがかり ]

区分: 小学校高学年の部(1200字以内)

感想文

講評(クリックで表示)

講評:ほろあま

読んだ本が小学校を舞台にした怪談作品で、まさにわくどくに適したチョイスで良いな思いました。作品のユニークな舞台設定についても比喩を交えて紹介していて、とても心惹かれる文章ですね。作品の見所について体験や考えを交えつつ説明することで、作品の魅力をいきいきと語られていて素晴らしいと思いました。そして、読書感想文コンクールもきっと他者の視点を通してその人を解き明かす貴重な記録なのだなと感じました。

内閣総理大臣賞おめでとうございます。

怪異の観察日記

夏から連想するものは人によって色々ですが、その1つが「怪談」でしょう。今回感想を書いた作品は、学校の怪談を題材としたライトノベルシリーズ『ほうかごがかり』です。
タイトルに「ほうかご」と入っている通り、この作品の舞台は放課後、しかも深夜の学校です。日中は人が多く賑やかな学校ですが、夜になると暗く静かで、大きく印象が変わるもの。学校の七不思議に夜が条件になっているものが多いのも、そういう理由だと思います。本作はその学校の七不思議になる前の、まだ発展途上の怪異「無名不思議」に対して、タイトルの「ほうかごがかり」に任命された生徒たちが立ち向かう物語。「ほうかごがかり」に任命されるのは、偶然にも(?)今回この感想文を提出した部門と同じ、小学校高学年の生徒たちです。
「ほうかごがかり」はどうやって怪異に立ち向かうのか。実際にやることといえば、担当の怪異を観察して現在の姿の記録を付けていくこと。相手が怪異でも、派手な戦闘のような非日常の行動ではなく、あくまで現実に地続きな行為が要求されるのが面白いですね。まるで宿題のアサガオの観察日記のようですが、アサガオと異なり、怪異は記録を付けることで成長を抑止できます。もし成長してしまった場合、担当者は学校の七不思議の「襲われる役」になってしまうというわけです。
本作で最も見所だと感じたのが、各登場人物の掘り下げパートでした。人は大抵わざわざ言わないだけで外から見えるよりも色々なことを考えているもので、まだ年若い小学生でも同様。ただ、それはその人の視点に立って初めて知ることができるものです。特に本作では小学生ということで、学校で過ごす姿は他の人からも見える一方、家庭環境などはなかなか他の人からは見えづらい。そして担当した怪異の持つ特徴は、個人の性格や、抱える事情と密接な関係があります。各々が怪異を観察してその核心部分まで記録として残すには、自分自身や抱える事情に正面から向き合う必要があるというわけです。もちろん、向き合った結果良い方向に転がるとは限らないのですが……
自分はこういった、人の数だけ視点があり、その人の視点に立つことで意外な一面が見えたり感情移入させられてしまう物語が好みです。そして物語に限らず個人的な文章であっても、その人の視点で、その人特有の着眼点や思考が現れた文章というのは面白いな~と感じます。この読書感想文コンクールでも、他の人の感想文や講評を読むのが今から楽しみですね。