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作品情報

応募者名: ほろあま

対象図書: 課題図書 [ 夢十夜 ]

区分: 小学校低学年の部(800字以内)

感想文

夏目漱石のことをすごいと思うようになったのは、夢十夜を読んでからだった。
夢十夜は何度も読みたくなるからだ。

その魅力はいったい何だろうかと、読み直してみるやはりその「嚙み砕けなさ」が心地いいのだろう。
夢十夜の各章は完全にバラバラのテーマで描かれているわけではなく、断片的に共通するものはある。
しかし、それが何か1つの大きな物語を書いているわけではない。
それが夢十夜の大きな魅力だと思っている。

もし私が夏目漱石で、夢について10個の短編を書こうと思ったとしよう。
きっと私はそれぞれの夢が最終的に1つのオチに繋がるような作品を書こうとするだろう。
そのカタルシスはきっと書く側にも読む側にも湧き上がるものだ。
しかし、実際の夏目漱石は決してそのような「夢十夜」を書かなかった。
どの章もかみ砕けなさを孕んでいて、全体を通して何か筋があるようにも見えない。
だからこそ、私はこの夢十夜をもっと深堀りして、何かそこにまだ見いだせていないものがあるのではないかと繰り返し読んでみたくなる。
しかし、なんでも不可解なものであればいいわけではない。
夢十夜はただ不可解なだけではなく、そこに人の心を動かす何かがある。
しっかりと1章1章が完結していて、読みごたえがあって、そこに人の心を動かす何かを描いているからだろう。
夏目漱石はあえて嚙み砕けなさを残し、夢という曖昧なものを夢十夜という形で表現したのだろう。
こうして読書感想文コンクールのために改めて読み直してみて、やはり何度読んでも嚙み砕けない。
嚙み砕けないからこそ、また読みたくなる。